株式会社ペルシャンワールド 会社案内サイトマップe-mailEnglish
ホーム > 絨毯コレクション > ギャラリー > 有名産地解説
ギャラリー | 有名工房


表(1) 有名産地の特徴


イランには古くからの絨毯産地がたくさんあります。タブリーズ、イスファハン、クム、ナイン、カシャーンなどの産地は、日本で「ペルシャ絨毯五大産地」と呼ばれ、比較的馴染みがありますので、皆さんご存知かも知れませんね。

これら各産地の絨毯は、材質や結び方やデザインなどにそれぞれ特色を持っています。(表(1)をご覧ください)馴れてくると絨毯を見ただけで産地を言い当てることができるようになるのは、このような比較的判り易い特徴が見られるからです。例えば、メダリオンとボーダーに明るいピンクを使った華やかなヨーロッパ風のデザインは“タブリーズ”のものです。ペルシャ絨毯は19世紀半ば、ヨーロッパの市場から火がつき、一大ブームを巻き起こしましたが、そのとき積極的に絨毯産業発展に取り組んだのが、イラン最大の交易都市タブリーズでした。ヨーロッパの好みにあわせたデザイン開発を進めた結果、このような特徴が生まれたと考えられます。
それでは、有名産地の具体的な特徴をご紹介しましょう。


イランの最北端、東アゼルバイジャン州の州都であるタブリーズは、古くからヨーロッパ・アジア間の交易の中継地として栄えたイランの主要都市として知られています。タブリーズの人々の多くはトルコ系で、ペルシャ訛りのトルコ語で話します。タブリーズは、13世紀のイル−ハン朝の時代に首都になり、16世紀のサファヴィー朝では最盛期を迎えました。このサファヴィー朝中興の英主シャーアッバス一世の時代には、首都イスファハンを中心に「ペルシャ芸術のルネッサンス」と言われる華やかな文化運動が展開され、ペルシャ絨毯も飛躍的な発展を遂げましたが、この時期に、タブリーズでも、芸術性の高い古典絨毯の逸品が数多く作られました。

近年は、20世紀に極めて斬新なデザインの絨毯を発表し“ペルシャ芸術界の巨匠”と呼ばれた“ラサム・アラブザデ”や、革命的なデザインでヨーロッパからペルシャ絨毯ブームを巻き起こした世界的絨毯デザイナー“モハッマド・ホセイン・ベナム”、かつて世界一織りの細かい絨毯を制作し、記録を更新された現在タイトル奪取に意欲を燃やす天才職人“ハサン・ネザミドゥスト”など、絨毯業界に影響を与える優れた芸術家を輩出しています。

左:ラサム・アラブザデ氏
右:ラサム・アラブザデ氏作品

※写真をクリックすると、紹介ページへ移動視します。

左:ハサン・ネザミドゥスト氏
右:ハサン・ネザミドゥスト氏作品『バハラムグール』

※写真をクリックすると、紹介ページへ移動します。


マヒ柄


ベナム柄


ピクチャー(アリナサブ工房)

現在タブリーズ産の絨毯で人気が高いのは、“ベナム柄”と呼ばれるデザインの作品です。基本的には伝統的なメダリオン・コーナー意匠ですが、イスファハンの絨毯と比べて紋様も配色も明るく華やかです。このデザイン、もともとはベナム工房のオリジナルですが、大量にコピーが出回るうちに、今ではひとつの意匠として認識されています。もうひとつ有名なのは“マヒ柄”です。“マヒ”とはペルシャ語で魚のこと。ロゼット紋様と葉紋様を繰り返しあしらったこの柄の、葉紋様が小魚に見えることから“マヒ柄”と呼ばれるようになりました。イランでは昔から作られていたデザインですが、タブリーズではノット数の多い高品質なマヒ柄絨毯を作って評判になりました。その落ち着いた雰囲気は和室にもよく馴染み、日本でも多くのファンを獲得しています。

 そして、タブリーズと言えば、いわゆる“ピクチャー”と呼ばれる絵画意匠の絨毯の産地としても有名です。近年は、イランの大画家“マフムード・ファルシチアン”と提携し、彼の作品を絨毯として生き生きと蘇らせた“アリナサブ工房”の活躍が目立ちます。アリナサブ工房は、ファルシチアン絵画絨毯だけでなく、風景、動物、肖像画など、あらゆるモティーフを見事に絨毯として織り上げてしまう卓越した技術を誇る名工房です。



1. メダリオン・コーナー・デザイン、2. ゼルロソルタン柄、3. ピクチャー(セイラフィアン作)、4. ダーバリ工房作、5. ダルダシティ工房作

イランの中部高原地帯に位置するイスファハンは、美しく荘厳な宮殿や寺院が建ち並ぶ、歴史と文化の街です。イスファハンは、サファヴィー朝(16〜17世紀)の第5代シャーアッバス1世が開いたペルシャ芸術ルネッサンスの中心舞台で、当時「イスファハン・ネスフェ・ジャハン」(イスファハンは世界の半分)と言われたほど隆盛を極めました。シャーアッバス大帝は、芸術に造詣が深く、宮廷芸術家のみならず、王の広場周辺には工芸職人の住居を建設して庇護するなどの政策をとりました。この時期ペルシャ絨毯も、宮廷工房が建設されるなどの追い風を背景に大いに発展を遂げています。

イスファハンの絨毯は、端正なフォルムと、繊細で華麗な色調、精緻な織りが特徴で、意匠は伝統的な“メダリオン・コーナー・デザイン”が中心。栄華の時代に培った伝統を最も正統に継承している産地と言われています。基本となるメダリオン意匠以外にも、花を生けた花瓶(ゴルダニ)をフィールド全体に繰り返し配した“ゼルロソルタン柄”や、20世紀の名匠セイラフィアンの作品に代表されるような写実的なピクチャーなども良く知られています。また、イスファハンで高い人気を誇るダルダシティ工房やダーバリ工房などの作品もオリジナリティに溢れていて、意欲的な印象を受けます。


左:モハッマド・ジャムシーディ氏
右:モハッマド・ジャムシーディ工房作品

※写真をクリックすると、紹介ページへ移動視します。

左:シラズィ氏
右:シラズィ工房作品

※写真をクリックすると、紹介ページへ移動視します。


テヘランの南約160kmに位置するクム。イランではイスラム教シーア派の聖地として大切にされている町ですが、世界的にはシルク絨毯の名産地として知られています。とりわけ日本に於いては、100%シルク絨毯のブランドとして、信頼と人気を集めています。

シルクは日本人にとって、昔からとても馴染み深い素材です。滑らかな肌触りと艶やかな光沢を持つシルクは高級素材として定着してきました。また、デリケートで儚げな印象も日本人の心の奥底をくすぐるのかも知れません。そしてクム産の美しく上質なシルク絨毯は、日本上陸以来、確実に日本人の心を捉えていきました。

クムのペルシャ絨毯産地としての歴史は浅く、以外にも100%シルク絨毯の本格生産が開始されたのは20世紀からです。わずかの期間にレベルの高いシルク絨毯を制作できるようになったのは、古くからクオリティの高いシルク絨毯を制作してきた絨毯産地“カシャーン”から伝授された技術によるものです。サファヴィー朝時代に宮廷工房が置かれていたカシャーンは、糸の精製、染色、織りの技術が高く、素晴らしいシルク絨毯を作っていました。そのカシャーンから技術を受け継ぎ、シルク絨毯の生産に力を入れ始めてから、絨毯産地としてのクムは急速な発展を遂げたのです。現在では世界が認める不動のシルク絨毯名産地です。

クムには、他の産地のように伝統的なデザインはありません。むしろ伝統に囚われない斬新さが特徴といえるでしょう。但し、クムに数ある優秀な工房は、それぞれオリジナルのデザインを持っています。モハッマド・ジャムシーディ工房、マスミ工房、ラフマニ工房、ラジャビアン工房、ヌーリー工房、ババイ工房、サマディ工房、ジェッディ工房、マユスィ工房、モハムマディ工房、シラズィ工房などのオリジナル作品は、それぞれ見ただけで判別できるほどの特徴を持っています。




左:ナイン産(ブルー)、右:ナイン産(ベージュ)



ナインは、イスファハンの東およそ150kmに位置する小さなオアシス都市です。

絨毯の生産は19世紀末からと言われています。ナインの絨毯は、イスファハンの影響を色濃く受けており、伝統的な意匠の作品が多く見受けられます。20世紀初頭には当時のイスファハンよりも高い評価を得るほど素晴らしい絨毯を生産していました。現在のナインも、世界的に有名なハビビアン工房を中心に、実用的な一般品質の絨毯から極細のたて糸を張って細密に織られた芸術的作品まで、幅広い品質の絨毯を作り続けています。

ナイン産絨毯は、イスファハン同様伝統的なメダリオン・コーナー意匠が多くを占めますが、イスファハン産絨毯に比べて、紋様と色使いがシンプルで上品なものが多く、それがひとつの特徴になっています。そのため、インテリアに合わせる際にお部屋全体との調和感が出し易く、日本でも多くの支持を集めています。



カシャーン・シルク(黒)


カシャーン・シルク(赤)


カシャーンはテヘランとイスファハンの丁度真ん中に位置する古くから伝統工芸を中心に栄えたオアシス都市です。ペルシャ絨毯が最も発展した16〜17世紀には、絨毯制作の中心地の一つとして栄え、宮廷工房も置かれました。その当時には細密な織りで技巧を凝らした意匠のシルク製絨毯の逸品が制作されています。当時は、「カシャーンから来た」と言うだけで一目置かれるほど腕の良い職人が大勢いたといわれており、それが難易度の高い細密なシルク絨毯制作を可能にしていたのです。

最近はどちらかと言えば型にはまった意匠の実用的な絨毯の生産が中心になっていますが、草木染めのコルクウールを使用して丁寧に織られたウール製絨毯は、「さすがカシャーンの絨毯」と唸らせる品質の高さです。シルク絨毯も少量ですが作られていて、その最高レベルの作品から、受け継がれた技術と伝統の重みを感じることが出来ます。