株式会社ペルシャンワールド 会社案内サイトマップe-mailEnglish
ホーム > 絨毯コレクション > 有名工房 
ギャラリー | 有名工房
















 2005年2月、二度目の来日を果たしたベナム氏にインタビューする機会を得ました。約 2 時間ほどのインタビューでしたが、お話を聴けば聴くほど、芸術家としての繊細さと、困難を乗り越えた人間が持つ優しさと誠実さが感じられました。そこで今回は内容を一部抜粋して紹介させて頂きます。いずれ本サイトの中で全文を掲載させていただく予定です。どうぞご期待ください。


聞き手 :イランより遠路遥々ようこそいらっしゃいました。本日はお疲れのところ貴重なお時間を頂きましてありがとうございます。

ベナム氏:ありがとうございます。私は前回の初来日でたいへん意義深く、価値的な経験をさせていただきました。今回も日本の皆様にお会いできるのを楽しみにして参りました。

聞き手 :今回は、1月の初来日に続き2月連続での来日ということになりますが、日本の印象はいかがですか?

ベナム氏:私はフランスやスウエーデンなどヨーロッパ各地の絨毯展に参加してきました。そのたびに、お客様が私の作品をどのように見てくださるか、ドキドキしながらお客様の視線を追いかけています。ヨーロッパでは、多くのお客様から『ベナムさんの絨毯を見るとハッピーな気持ちになります』と有難い言葉をいただきましたが、日本のお客様からも『やさしい色使いが素敵ですね』『見ていると気分が落ち着きます』といったお褒めの言葉を頂戴することができました。

 また、多くのお客様に私の作品をご購入いただくことも叶い、感謝と喜びの気持ちで満たされました。日本のお客様について印象的だったのは、ブランドや品質に対しての厳格さでした。それは本当に価値があるものをしっかり見極めようとする姿勢であると思います。多くのお客様が絨毯をめくって裏側をご覧になっていました。織りの細かさを確認するためだと思いますが、ヨーロッパの会場では見られない光景でした。畳の文化を持つ日本は、ヨーロッパに比べて絨毯への関心が薄いのではないかと認識していましたが、それがどんでもない誤りであることがわかりました。日本のお客様の方がずっと絨毯に詳しいですね。

 見た目の美しさばかりではなく、織りや素材の知識から産地や文様などの歴史的背景に至るまで、興味を持って勉強されている方が大勢いらっしゃるのではないでしょうか。是非今後も勉強を重ねて、更に本物を見る目を養っていただきたい。私もそれを励みにして、ますます本物の作品、つまり将来アンティーク絨毯として輝きを増す絨毯を、1枚でも多く作れるように努力を重ねてまいります。

聞き手 :そうですね。私たちも絨毯はもちろんのこと、ペルシャの歴史と文化にまで、より多くの日本の皆様に興味を持っていただけるように努力します。では、次にベナムさんのご家族について聞かせてください。

ベナム氏:私は1954年にイランのタブリーズで生まれました。父は芸術家ではなく絨毯の織り職人でした。兄弟は姉が 3 人と妹が1人。つまり5人兄弟の4番目ですが、私以外は全員女性なのです。そんな家庭でしたが、父は私にプレッシャーをかけるようなことをせず、芸術家への道を進むことに賛同し協力してくれました。

 私は高校に入学すると油絵とミニアチュールを本格的に学び始め、15 歳のときに知り合いの商人の勧めで絨毯のデザインを始めました。その商人とはその後深い関わりを持つことはありませんでしたが、今考えれば恩人だったと思います。現在の家族はといえば、妻と 3 人の息子がいます。息子のひとりはコンピューターグラフィックを学び、ひとりはハンディクラフトを学び、もうひとりは映画の世界に没頭しています。3 人ともそれぞれ分野は違いますが芸術の世界に進もうと志しています。いずれ力を合わせて何かを創れる日が来るのではないかと楽しみにしています。

聞き手 :素敵ですね。恩人である商人の話がありましたが、影響を受けた人物や尊敬する人物の話も聞かせてください。

ベナム氏:尊敬する人物は“ファルシチアン絵画絨毯”で有名なマフムード・ファルシチアン先生です。ファルシチアン先生は、自らの美術作品を絨毯のデザインとして提供することで、ペルシャ絨毯の芸術的価値を一層高めることに大きく貢献しました。私も本物の芸術家である先生の意思を継いで、芸術的価値の高い絨毯を作り続けていきたいと思います。

聞き手 :ベナムさんは現在押しも押されぬトップデザイナーですが、成功のポイントは何でしょうか?

ベナム氏:イランには絨毯デザイナーがたくさん居ますが、皆デザインを描いて売っておしまいです。作品の完成を見届けるデザイナーは皆無でしょう。ところが私は必ず作品が出来上がるまで現場に通います。そうすると織りの職人さんが喜んで、気合を入れて、心を込めて織ってくれます。その結果、私のデザインが高品質の絨毯となって世に出て行くことになります。そうして多くの人の目を引き、評価を受けることができたのだと思います。いかに優れたデザインであっても、品質が悪ければ評価される機会に恵まれることはありませんから。

聞き手 :逆に苦労したことや挫折したことなどはありましたか?

ベナム氏:今からおよそ12年前、私のデザインのコピー商品がマーケットを賑わしました。もちろん私の知らないところで勝手に使われたものですから、法的措置をとることも出来たのですが、そのようなことをするのは将来のある若者ばかりだったので黙っていたのです。ところがそこに思わぬ落とし穴がありました。税務署が販売されたコピー商品150点分の税金を私のところに請求してきたのです。もとより私が負担すべきものでないことは誰の目にも明らかです。私は理を尽くして説明しましたが、結局受け入れてもらえませんでした。私はタブリーズという町に対しても、大切にしてきた絨毯業界に対しても大いに失望し、二度と絨毯のデザインはするまいと決め、筆を折って町を出ました。そして暫くの後、心から信頼する友の説得にあって、再びこの世界に身を捧げる決意に立つことになるのですが、この一連の騒動は、私にとって忘れることの出来ない大きな体験になりました。以来私はコピーを一切許さないというのではなく、コピーしたとしても私のサインを入れないようにと強く訴えてきました。

聞き手 :コピーを許すとは寛大ですね。トップデザイナーとしてのプライドを感じます。ところで、ベナムさんの最高傑作といえば、どんな作品ですか?

ベナム氏:15年前に完成した“サルシャール”というタイトルの作品です。規格は300cmの正方形。織ったのはタブリーズのピクチャー専門の織り職人で“世界一の技術を持つ職人”とも言われたアリ・ケネディ氏です。その頃の彼の作品は、そのほとんどが世界の美術館に飾られています。氏は100cm角以上の絨毯を制作したことはありませんでしたが、『是非ベナムさんのデザインを織りたい』と言ってくださいました。私もアリ・ケネディ氏に織ってもらえるのであれば、すごい大作が出来ることを確信していました。私は彼に『完成したら家一軒手に入れることができるでしょう』と言い、また『この作品が完成したら貴方も私も歴史に名を残せることでしょう』とも言いました。こうして契約が結ばれ、私はかつてない渾身の力で描き、最高傑作を彼に託しました。彼の家は山の中腹にありましたが、私は完成までの 5 年余りの間、険しい道を毎週 2 回通い続けました。そして見事な作品が完成し、彼は家を手に入れました。その作品は現在私の手元にあります。

聞き手 :最後にベナムさんから日本の皆様へメッセージをお願いします。

ベナム氏:それでは27年前の話をしましょう。私がドイツのフランクフルトで絨毯屋を営む友人を訪ねたときのことです。店に国会議員の奥様がやってきました。議員夫人は充分な時間をかけて商品を吟味した後、ついに気に入った商品を選び出しました。しかし問題はここからでした。夫人は店の主人に無理な価格を要求してきたのです。しかも力ずくといった様相です。主人は困り果てていました。夫人に気分を害されることで後々面倒な事態を招かないとも限らず、さりとて言うとおりに値引きをすれば今後の商いに悪影響を及ぼしかねません。そしてなによりペルシャ絨毯の価値を落としてしまいます。見かねた私は『お許しをいただけるのであれば、私に少し話をさせてください』と丁寧な口調で割り込みました。私は夫人のために椅子を一つ用意させ、それを白い壁に向かって置き、夫人にこう言いました。『この白い壁から30cmだけ離れて座り、30分間壁だけを見つめていることができたら、私がその絨毯をプレゼントしましょう!』夫人は30分くらい楽勝とばかりに受け入れ、壁に向かって座りました。もちろん私には結果は目に見えていました。夫人は 3 分でギブアップして立ち上がりました。私は夫人に語り掛けました。

 『貴女が選んだこの絨毯は、名も無いひとりの職人が、来る日も来る日も一日中織り機の前に座って黙々と織り続けてようやく完成したものです。職人は、3 年も 4年も毎日同じように織り機からわずか30cm程度の距離を保ち、張られた白い縦糸を前に座り続けているのです。その忍耐と努力を想像してください。そして、職人だけではありません。1枚の絨毯が世に出るまでには20人も30人もの人たちが関わっており、皆それぞれ忍耐と努力をもって取り組んでいるのです。私はデザイナーとしてそれらの人たちに対し、心からの尊敬と感謝の気持ちを懐いています。そして、そのように多くの人間の気持ちが込められた手織り絨毯は、本来お金に換えることは出来ないくらい尊いとさえ思います。』夫人は目に涙を浮かべながら反省の言葉を口にし、店の主人が最初に提示した価格で買っていきました。

 日本の皆様は、ペルシャ絨毯へのご理解が深い方が多く、絨毯の制作工程やペルシャ文化にまで興味をお持ちの方も多いと聞いて嬉しく思います。是非、皆様が絨毯をご覧になるとき、その陰には制作に携わった大勢の人たちの忍耐と努力があることを思い出していただきたいと思います。1 人の職人は、生涯に何十枚も織れるわけではありません。4 年も 5 年もかけて作り上げた絨毯を自分の子供のように可愛く思うのは当然です。その絨毯を世に送り出す際の職人の願いは、この絨毯に愛情を注いでくれる人のもとに買われて欲しいということと、この絨毯を愛してくれる家族が皆幸福になって欲しいということだそうです。芸術は心です。私は、このようなところに芸術の核心があるような気がしてなりません。



| 世界を魅了する華麗なデザイン ベナム工房|
| ベナム工房 絨毯の画像 |